同人サークルMOBが1975年3月に発行した「別冊MOB1 岡元敦子特集」です。
本の装丁はB5サイズ、76頁。青焼きとガリ版(謄写版印刷)を組み合わせたパートカラー印刷を行っております。ガリ版印刷をご存じない方はわかりにくいと思いますが、基本的には漫画の同人誌には向かない印刷方式です。
この同人誌には岡元敦子という作家を特集した同人誌という側面とガリ版、青焼きという印刷方式の粋を尽くした同人誌という2つの側面を併せ持った非常に稀有な1冊である。
左が表紙。紙の地の色彩は印刷ではなく紙本体の模様(彩雲)である。緑、青、黄色、黒の4色によるガリ刷りが行われている。右は扉絵。背景の絵は青焼きによるもの。青焼きの後に緑と赤の2色でガリ刷りを行っている。
目次は以下の通りである。
・岡元敦子作品リスト
・亜庭じゅん「人形たちへの扉 −岡元敦子断章」評論
・岡元敦子「クッションムクムク」
・岡元敦子「屋根裏ラットパトロール」
・岡元敦子「一本の木」
・岡元敦子プロフィール
・岡元敦子インタビュー
漫画作品は3作品が掲載されている。以前の同人誌からの再録である「クッションムクムク」、雑誌掲載版のプロトタイプ「屋根裏ラットパトロール」、SF作品「一本の木」。漫画作品の頁はすべて青焼きコピーによる印刷である。3作品とも色が違うのは感光紙や現像液の組み合わせによって発色をコントロールしているためである。ベタにムラが殆どないことから原稿からトレーシングペーパー(デルミナ)へ複写した第二原図を利用していると思われる。
こちらは岡元敦子作品解説の部分である。絵は青焼きによる印刷で文字部分はガリ刷りによる印刷である。
こちらが岡元敦子が所属していた北漫会の他会員によるエッセイの頁。絵に3色(黄色、オレンジ、緑)と文字(茶色)の4色によるガリ刷りが行われている。
こちらは2色によるガリ刷りであるが、これが一番どうやって印刷したのかわからない。絵の方もガリ刷りによるものだがこれをトレースしたというのがちょっと信じられない。またベタの部分の処理方法もよくわからない。という具合の実に恐るべき技術が使われている。
MOBを主催した鈴木哲也氏はコミケの第1回(1975年12月開催)のポスター(というよりはチラシに近いサイズ)も作っている。
こちらがそのポスターである。インク色は実に6色。”COMIC MARKET”の文字のところはグラディエーシンとなっている。
凄まじい技術というほかないのだが、ガリ版も青焼きも1980年台に入ると普通紙コピーの低価格化と同人誌専門印刷屋の出現によるオフセット印刷の低価格化により急速に影が薄くなってしまった。時代の流れとはいえ、この技術がこのまま誰にも知られず消え去ってしまうのはちょっと惜しく思えます。
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