毎週日記になると新着目録の中から古い漫画を紹介するのが常になっているのですが、ちょっと飽きてしまったので(^^;、たまには別なものを紹介します。
今週、草紙類がまとめて30冊ほど入荷しました。あまり程度状態は良くないので500円から5千円くらいの値段を付けて店頭に出しております。目録販売には向かないので店頭売りだけですが、せっかくなのでちょっと紹介します。
・緑亭川柳、歌川豊国「遊仙沓春雨草紙 」
・緑亭川柳、歌川芳虎「祥瑞白菊物語」
・笠亭仙果、歌川豊国「塩屋文正」
・楽亭西馬、歌川国輝「花簑笠雅物語」
・為永春水、歌川国貞「椿説鬼魅談語」
・英壽、歌川国輝「容色仙台萩」
・万亭應賀、歌川豊国「釈迦八相倭文庫」
・為永春水、歌川国貞「北雪美談時代鏡」
・為永春水、歌川国貞「花曇朧夜草紙」
・柳亭種彦、歌川国貞「偐紫田舎源氏」
・柳亭種員、歌川国輝「仮名反古一休草紙」
・曲亭馬琴、歌川国安「新編金瓶梅」
などがあります。
だいたい文政文化以降に出版された、今で言う大衆小説的なもので中には何千部と刷られたものもあります。当時としてはかなりの大量生産物ですが、表紙などは錦絵と同じ手法が取られそれなりに見応えがあるものも含まれます。
次の写真は「花曇朧夜草紙」の表紙絵です。(画は国貞と書かれていますが、内部の画が国貞で表紙絵は豊国です)
かなりの多色刷りで、ぼかしなどの技法も使われており、値段の張る赤顔料も豊富に使われ、制作者の意気込みが伝わります。
内部の刷りも単なる墨絵ではなく藍との二色刷。しかも艶刷り、空刷りなどのこだわりの技法も見られます。
上の写真の黒いベタの部分に艶刷りの技法が用いられています。ニカワを多く含んだ墨で刷り、乾いた後で表面を擦ることにより艶を出させる技法です。下の写真はちょっと角度を変えて光が反射するように写しています。
このようにちょっと角度を変えると模様が浮かび出すという表現に江戸の職人の粋というものを感じさせます。
こちらの写真はちょっと見え難いのですが、女性の着物の白い部分にぼんやりと放射状の模様が入っているのが分かるかと思います。これが空刷りと呼ばれる技法です。顔料をのせずに刷りを行い、紙に凹凸をつけることにより模様をつけたり、またその凸凹で手触りを楽しませたりしたものです。
刷りのレベルも保存状態も本当に多種多様です。出来ましたらご来店の上、直接手に取って頂き楽しんで頂ければと思います。
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